春雨じゃ

　今日の雨は春雨にあらず、氷雨に近かろう。
「春雨じゃ濡れて行こう」と風流にも言えぬ。
しかしそれがどんな雨であろうと草木や花、農作物にとっては
成長のための大切な水分であろう。

　朝にはまだ降り始めて居らず、空気が湿り気を帯びて、
私の肺にも何かしっとりとした感覚、いや感覚であるのなら
肺にだけではなくむしろ心に浸みたものであったろう。

　私はカラカラに晴れ、ギラギラに照りつける天気よりは
シトシトと降る春雨のほうが好きである。
万物が生きる成長を促すこの時期の雨こそ有難い。

　♪傘が無いわけじゃないけれど、帰りたくない♪　なんて
歌謡曲の「氷雨」みたいに拗ねているばかりじゃなく、
自らの暮らす場所にしっかりと根付くよう春雨にゃ大いに
濡れてしまおう。